2012.08.16更新

私が被害者の代理人として訴訟をしていた訴訟交通事故損害賠償事件について、先般、比較的高額の賠償請求を認める判決が言い渡されたので紹介します。
1 事案内容
  被害者は事故当時29歳の男性会社員で、就業中に事故に遭い、多発性脳挫傷、びまん性脳損傷等の重症を負った。約1年の治療により症状固定と診断されたが、遷延性意識障害、四肢麻痺等の重篤な後遺障害が残り、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として自賠責保険後遺障害等級別表第一第1級1号に該当するものと認定された。約2年半の入院の後、自宅介護に移行している。
 訴訟における争点は、家族による入院付添費、将来の介護費、住居買換費用、介護用自動車購入費用、介護器具購入費用、逸失利益、慰謝料額等々、損害額全般にわたった。なお、過失相殺の適否も争点となっていたが、判決は過失相殺を認めたなかった(この点の説明は省略する)。

2 判決が認めた損害額
(1)  治療費                14,457,536円
(2)  転院時の移送費             418,805円
(3)  入院雑費                    526,500円 (日額1,500円)
(4)  家族の入院付添費          2 ,010,600円 (日額6,000円)
(5)  将来介護費
     ① 入院期間中の2年間      4,072,086円  (日額6,000円)
     ② 自宅介護(妻67歳まで)    63,449,568円  (月額360,000円)
     ③ 自宅介護(妻67歳以降)   9,357,322円  (日額15,000円)
(6)  家屋改造費(建替費)        9,074,000円
(7)  住宅買換経費                1 ,329,900円
(8)  車両購入費              2,400,000円
(9)  車両改造費              1,615,911円
(10) 介護ベッド購入費             1,599,263円
(11) 車椅子購入費             2,087,389円
(12) 入浴装置購入費           2,356,000円
(13) 歩行器購入費               267,687円
(14) めがね購入費                40,000円 
(15) 介護雑費
     ① 入院中                678,681円 (日額1,000円)
     ② 自宅介護期間          6,497,441円 (年額396,270円)
(16) 休業損害                5,226,861円
(17) 逸失利益              113,763,165円
(18) 傷害慰謝料              3,700,000円
(19) 後遺症慰謝料            25,000,000円 

以上合計 270,032,115円から損害補填済み金額を差し引き弁護士費用及び確定遅延損害金を加算した202,740,702円の損害賠償請求が認められた。また、家族の慰謝料請求についても330万円が認められた。

3 コメント
  症状固定後に被害者の後遺障害に多少の改善が見られたことから、将来の介護費は比較的低額の認容にとどまったものと思われる。被害者の身体状況や介護の実態については比較的正確に認定していたものの、損害の認定については、家屋建換費の一部やエレベータ設置費用を認めず、入浴装置についても実際に購入した費用の一部を認容するにとどまるなど、やや不満の残る内容であった。

投稿者: 柏木幹正法律事務所