2013.07.04更新

 また、別の例(松山地方裁判所平成20年7月1日判決)では、不正経理をしていた従業員が上司から繰り返し叱責されて自殺したケースについて、上司がこの従業員に対し、他の職員から見て明らかに落ち込んだ様子を見せるまで繰り返し、叱責したり、「会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが、辞めても楽にならない」旨の発言をしたことについて、「不正経理の改善等の指導自体が正当な業務の範囲に入ることを考慮しても、社会通念上許される業務上の指導の範疇を超えるものと評価せざるをえない」として上司の叱責を不法行為と認め、会社の安全配慮義務違反も認定して、自殺した従業員の相続人からの損害賠償請求を認めた。
 もっともこのケースでは不正経理をした従業員側にも6割の過失があるとして、過失相殺を認めている。

 いずれにしても、リストラとも絡んでパワハラが問題視されるケースが増えている。パワハラ被害を受けた従業員は、自殺するまで心理的負荷を溜め込まず、早く専門家に相談することが肝心であり、会社側は、パワハラ防止の社内規制を設け講習会等の事前予防措置ことることが必要である。

投稿者: 柏木幹正法律事務所